松本の奥座敷と称される浅間温泉。
そこに江戸時代から続き、古くからのものを大切にしつつ、
いつの時代にもふさわしいおもてなしで知られる
老舗の宿があります。
「蔵しっくほてる」の別名が示すように、大きな蔵のある宿。
それが「静保庵・小柳」です。

JR松本駅から10分間隔ほどで出ている
浅間温泉行きの路線バスに乗って20分ほど。
浅間温泉のターミナルに宿のクルマが待っていました。
宿までは歩いても数分とわずかな距離ですが、
荷物の多い旅人にはうれしいかぎり。
正面玄関に「小柳之湯」と書かれた額が掲げられた門があります。
石段を上がると飲泉所があり、
さらに上って玄関ロビーに着きました。
アンティークな調度品やオブジェが飾られたロビーは
ゆったりとした落ち着いた雰囲気。
案内された部屋からは中庭の池がよく眺められ、
整った植栽は和風旅館ならではの風情がありました。

荷物を置いて階下の大浴場へ。
畳敷きの廊下を進み、紺地に「ゆ」と
白く染め抜かれた暖簾をくぐり、
殿方用の「夢織り」に入ります。
浅間温泉ならではの肌がすべすべする湯にのんびりと浸かれば、
体も心も十分にリラックスできました。

湯上がりに部屋でくつろいでいると
「ご夕食の準備が整いました」との電話。
食事処でいただく料理は、信州小山牛をメインにした会席料理です。
旬のフルーツを仕立てたワインの食前酒に始まり、
前菜は箱に盛られた白アスパラの豆腐やゴボウの彩り揚げ、
もずく酢、サツマイモの羊羹など。椀は甘鯛など。
お造りは信州鱒の酢じめ、赤イカ、ビントロマグロなどの盛り合わせ。
そしてここで登場するのが
塩尻市で生産されている小山牛の石焼きです。
口の中に入れるとスーッと溶けるほどやわらかく、
それでいて肉の旨味が広がっていくまさに絶品。
この味を求めて遠方から訪れる人が多いというのもうなずけます。

夕食後、宿の中に人気のエステサロンがあると聞き、
誘われるままに出かけてみると、
そのサロンは大正三年に建てられた
たいそう立派な蔵の中に設えられていました。
以前は蔵料亭「麻葉野」として、
多くの旅行雑誌などに掲載された風格のある蔵です。
「蔵の中だとよりいっそうリラックスできて効果的なんですよ」
との説明を聞きました。

ここで過ごす時間は、温泉とはまた違った
心が癒される時間となることでしょう。
翌朝、宿の近くを散策すると、
宿の横に長さ20メートルもの大きな蔵が目に飛び込んできました。
よく見ると途中でつないだような二棟の蔵で
「小柳」の蔵印も入っています。
さすがに「蔵のまち松本」の奥座敷ならではの宿です。

朝食はニジマスの一夜干し。
ロールキャベツやがんもどきなどの炊き合わせ。
ポテトサラダ。麦とろ。豚肉と豆腐の鍋物。
温泉玉子。香の物にお味噌汁。
どれも食材を選び抜いたものばかりで、
ていねいな味付けが食欲をそそります。

部屋も温泉も料理も宿の人のおもてなしも、
どれもが一級品の宿。
それが老舗の誇りを大切にした「静保庵・小柳」が
名宿と呼ばれる所以です。

住所:長野県松本市浅間温泉3-13-1
電話:0263-46-0500


